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Naoki Kita & Kyoko Kuroda Duet

喜多直毅&黒田京子デュオ

<プロフィール>

 

2人は2002年秋に初めて出会って以来、10年以上に渡り活動を続けている。当初は単純なセッションという形態での演奏を行っていたが、喜多が自身のCDのレコーディングに黒田を招いたり、黒田もまた喜多に声をかけて共演を重ねるうち、徐々に互いを重要なパートナーとして認識し始め、やがて固定化した1つのデュオとなった。

 

2008年、ファーストアルバム『空に吸はれし心』を発表。その瑞々しい音色とイマジネーションが豊かに広がる世界は、そのタイトル通り、高く青い空を想わせる。リリース直後より、現在でも高い評価を得ている作品である。

 

このアルバムが発表された頃より、2人の関心は音と言葉、さらに音楽と詩や物語へ向かい、それはコンサートシリーズ『軋む音』(2010年~2011年)へとつながった。

 

この『軋む音』では、毎回異なるテーマをもとに音楽創りが進められ、その内容は、作曲、即興演奏はもとより、歌、朗読や演劇的な装置やふるまいも伴った、小さな音楽劇と言ってよいものであった。

 

第1回は美術家・内藤礼のインスタレーション作品から得た印象をもとに創られた「二本のリボン」。以降、第2回は死刑囚・永山則夫の生涯をたどった「絶叫」、第3回は作家・ヴィクトール・フランクルの著作「夜と霧」「それでも人生にイエスと言う」をもとに構成された「希望」、第4回は夭折した画家・石田徹也の生涯を扱った「繭蟲」、そして第5回の「轍」をもって、いったんピリオドが打たれている。

 

タイトルの『軋む音』とは、心の最深部で発せられている言葉にならない声のことであり、2人が奏でる音楽そのものを指す。テーマとしてとりあげられた人物の言葉や作品の奥深くにあるものに耳を澄まし、その生き方の根底にある思いを音楽として描き出すこのコンサートは、非常に多くの関心を集めた。

 

『軋む音』以後、通常のコンサートのプログラムに、シャンソン、ファド、ロシアの歌、ラテン、タンゴ、昭和歌謡、映画音楽など、オリジナル曲以外の楽曲もレパートリーに組み入れられ、ポピュラー音楽集となる2枚目のCD『愛の讃歌』への発表へとつながる。

 

CD『愛の讃歌』には映画音楽やシャンソン、昭和歌謡の数々を収録。強烈に心に突き刺さる漆黒の音塊と痛切なノイズを伴いながら、ヴァイオリンは情趣に富んで歌い、ピアノは色彩豊かに情景を描く。楽器本来の音色はもとより、さらなる響きの可能性を追求し続ける2人ならではのアプローチを聴くことができ、大胆な編曲とインプロヴィゼイションによって、音楽はよりドラマティックに展開して行く。決して一筋縄ではないポピュラー音楽集だが、様々な人生、いつか見た風景、遠い記憶が呼びさまされるような、深い時間を持つことのできる作品になっている。

 

こうした文学や美術、さらに映画などの内容、また歌の言葉(歌詞)への洞察から始まる楽曲へのアプローチは、『軋む音』を経た2人のもっとも得意とするところであり、器楽奏者のものとしては非常にユニークである。歌の持つ言葉に様々な角度からメスを入れ、言葉になる以前の心情に耳を澄ます、そこから音楽を引き出す手法によって創り出される音楽は、たとえ誰もが知っている曲でも、イージーリスニングやBGMとは大きく異なっている。

 

また、それぞれの演奏経歴もデュオのサウンドを独特たらしめている。黒田はジャズから出発し、フリージャズ及びフリーインプロヴィゼイション、ノイズ音楽を経由している一方、喜多はアルゼンチンタンゴを出自とし、情緒的な表現を得意とする。そして、近年、即興音楽へのアプローチを深めている喜多により、デュオの演奏は幅を広げるとともに先鋭化し、コアな音楽ファンからの注目を集めている。

 

3枚目のCD『残された空』にはそれぞれのオリジナル曲のほか、戦場に散った人々へのレクイエムも収められている。言葉になる以前の心に耳を澄まし、その思いを奥深いところから汲み上げて生み出される音楽は、時に強く、時にやさしく、人々の心を打つ。ひとりひとりの今に問いかけ、明日へとつなぐ一枚となっている。

 

時代に流されることなく、常に新しい表現を追い求め、「心に深く届く音楽」を奏で続けるデュオとしてまさに唯一無二である。

 

 

 

<ヒストリー>

 

2008年

CD『空に吸はれし心』発売。

 

2012年8月、9月

北海道ツアーを行う。函館、八雲、石狩当別、北広島、札幌、釧路を廻る。

 

2013年10月、11月

北海道ツアー『木枯らし』を行う。函館、石狩当別、札幌、小樽、旭川、帯広、釧路を廻る。

 

2014年10月

2枚目のCD『愛の讃歌 ~Hymne a l amour~』(2014年8月録音)を発売。CD発売記念コンサートをラトリエ(渋谷)にて行う。

 

2014年11月

西日本ツアーを行う。甲府、松本、名古屋、京都、神戸、広島、岡山、石見銀山を廻る。

 

20015年7月

東北ツアー『空と風と大地のソナタ』を行う。八幡平、盛岡、水沢、登米、仙台、天童を廻る。

 

2015年8月

戦後70年を迎えた終戦記念日に、『鎮魂のコンサート』(於 キッドアイラックホール 明大前)を行う。戦没画学生によって描かれた、戦場からの絵葉書に囲まれて、否、対峙して、私たちは言葉を読み、音を放ち、音楽を奏でた。

 

2015年9月

北海道ツアー『秋の前奏曲』を行う。函館、石狩当別、札幌、旭川、釧路を廻る。

 

2016年7月、8月

九州・山陽ツアー『The Summer Knows』を行う。長崎、福岡、久留米、熊本、門司、尾道、福山、岡山を廻る。この年の4月、熊本地震があったので、各地に募金箱を設置し、集まったお金はすべて“ゆめ風基金”へ寄付をした。

 

2017年9月

永井ウィメンズクリニック(新三郷)にて、子供の部では朗読と音楽による『ヴァイオリン弾きのゴーシュ』(原作:宮沢賢治、脚本&朗読:森都のり)、大人の部ではデュオのコンサートを行った。

 

2017年10月

『第29回ジャズ・プラッツ』(於 ル・ヴェソン・ヴェール 南大沢)に出演。

 

2017年12月

永井マザーズホスピタル(新三郷)にて、クリスマス・スペシャル朗読会&コンサートを行う。

 

2018年1月

久保田麻琴プロデュースによる『Life is a Movie』(於 晴れたら空に豆まいて 代官山)に参加。共演者には、笹久保伸(g)、浜田真理子(vo)など。

 

2018年7月

『Jazz World Beat 2018』(於 めぐろパーシモンホール 目黒)に参加。

他に、浜田真理子(vo)のコンサートにもゲスト出演し、このとき演奏された楽曲「リリー・マルレーン」は、2020年2月に発売された浜田真理子のCD『MARIKO HAMADA LIVE 2017~2019 vol.2』に収録されている。

 

2019年5月

ドキュメンタリー映画『作兵衛さんと日本を掘る』(熊谷博子監督)が一般公開される。この映画の音楽(作曲と演奏のみ)を黒田が担当し、共演者として喜多も参加する。6月には公開記念ライヴをポレポレ坐(東中野)で行う。

 

2019年8月

『ダ・ヴィンチ音楽祭』(於 川口総合文化センター・リリア 音楽ホール)の「古楽リレー・コンサート」に参加。

 

2019年10月

3枚目のCD『残された空』を発売。11月にはCD発売記念コンサートをハーフムーンホール(下北沢)で行う。

 

2020年10月

北海道ツアーを行う予定。

国立音楽大学卒業後、英国にて作編曲、アルゼンチンにてタンゴ奏法を学ぶ。京谷弘司、小松亮太等(共にbandoneon)のタンゴ楽団、鬼怒無月(gt)ユニット参加を経て、現在は即興演奏やオリジナル楽曲を中心とした演奏活動を行っている。タンゴに即興演奏や現代音楽の要素を取り入れた“喜多直毅クアルテット”の音楽は、そのオリジナリティと精神性において高く評価されており、これまでにアルバムを二作品リリースしている。黒田京子(pf)とは10年以上に亘りデュオ名義で活動。これまでにアルバムを三作品リリース。他に翠川敬基(vc)、故・齋藤徹(cb)との演奏の他、邦楽・韓国伝統音楽奏者やコンテンポラリーダンサーとの共演も数多い。近年は西嶋徹(cb)とのデュオアルバムをリリース。欧州での演奏も頻繁に行う。

'80年代後半、自ら主宰した「オルト」では、池田篤(as)、村田陽一(tb)、大友良英(g,etc)等、ジャズだけでなく、演劇やエレクトロニクスの音楽家たちと脱ジャンル的な場作りを行う。'90年以降、坂田明(as)、斎藤徹(b)、早坂紗知(as)、酒井俊(vo)、カルメン・マキ(vo)などのバンドメンバーや、演劇や朗読、無声映画の音楽などを長期に渡って務める。'04年から6年間余り、太田惠資(vn)と翠川敬基(vc)のピアノ・トリオで活動。'02年に出会った喜多直毅(vn)とは現在に至るまで主にデュオでの活動を続けており、'10年から言葉と音楽の実験劇場「軋む音」を不定期に展開。近年はジャズはもとより、そのとき、その場で感じたことやイメージを大切に、即興演奏と音色を軸としたアプローチで、様々な楽器奏者や歌手と共演を行っている。'06年にはオルト・ミュージックを立ち上げ、コンサートの企画も手掛ける。'13年、ピアノソロのCD『沈黙の声』、'19年、喜多直毅とのデュオCD『残された空』を発表。

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